法律的には合法と違法の「グレーゾーン」にあるのが散骨です。散骨をサポートする業者の大半は、パンフレットやホームページなどで、「法務省が『葬送を目的とし節度を持って行う限り、死体遺棄には当たらない』という見解を述べたことが、実施の根拠になる」と説明しています。
この〝法務省見解〟は、1991年に発足して「葬送の自由をすすめる会」が散骨について法務省に、「刑法」の「遺骨遺棄」(190条)との関係を問い合わせた際に、法務省が答えた「非公式見解」であるといわれています。
『終活読本ソナエ』編集部では法務省刑事局に散骨について質問を投げてみました。質問と回答は以下の通りでした。
――散骨の根拠とされている法務省のコメントは有効なのか
法務省把握している限りでは、そのような見解を出したことはない
――遺骨遺棄罪との関係でみたときに、散骨の違法性の有無についてどう考え、どう判断するか
法務省散骨が犯罪として成立するかどうかは、捜査機関が収集した証拠に基づいて判断し、最終的には裁判所で決めることになる。(ここでは)具体的な証拠に触れられないので判断できない
――遺骨遺棄罪以外に何か関係する条項があるか?あれば何罪で、どう解釈されるか
法務省可能性としてはいろいろあるかもしれないが、罪名をあげるのは差し控えたい。他の省庁で所管している法律もある
つまり法務省は、散骨について何らお墨付きを与えていないのです。かといって、現在実施されている散骨について、「違法」という強い認識をもっているわけでもないようです。やっぱり散骨はグレーゾーンなのです。
散骨については、厚生労働省が管轄する「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」も関係がありそうです。厚労省健康局に取材してみると、「現在行われている散骨は、『遺族が故人の遺志を尊重して、公共の福祉に反しない形で、節度を持って行われている』と聞いている。であれば一般的に墓埋法とは関係ないことになる」ということでした。
墓埋法は、遺骨の埋蔵(土の下に納めること)などについて定めている。一方、散骨は骨を撒くだけで、土を被せるようなことはしない。「法律の対象外」ということのようです。
もっとも、法律ができたのは1948(昭和23)年。法律は散骨をまったく想定していない時代のことでした。
また法律とは別に、全国各地で骨を撒くことへの忌避感から、散骨場をつくろうとした業者や団体と、地元との間でトラブルが発生しています。まだ少数派ではありますが散骨を禁止する条例をつくる自治体も増えています。