墓石には、家名や家紋、メッセージ、絵など、様々なものが彫刻されます。墓石の彫刻の内容や、注意する点についてご紹介します。
文字の書体は、楷書体・行書体・草書体・隷書体・ゴシック体などがありますが、コンピュータに登録されたデジタル文字を使用する以外に、書家に依頼したり、自筆の文字で彫ることもできます。
石材店が作成した原稿で最終確認してから彫刻作業に入ります。
お墓に新しいホトケ様をお迎えする時は、石材店に依頼して、墓誌(法名碑)に新しい戒名(法名)を追加彫りしてもらいます。現場へ持ち運びできる移動用彫刻機があり、既存の彫刻文字に合わせて同じ書体と大きさ、深さで彫ってくれます。
彫刻の種類
石材業の字彫り作業は、機械化されるまではノミを使った手彫りでした。現在は主にサンドブラスト機を使って、カーボランダム(炭化ケイ素)と呼ばれる金剛砂を圧縮空気で文字の部分に吹き付けて彫刻します。
和型墓石の場合、仏石(竿石)の正面に彫る文字で圧倒的に多いのは「○○家之墓」「○○家代々之墓」ですが、洋型やニューデザイン、オリジナルデザイン墓石では、遺族または故人へのメッセージ(墓碑銘)として好きな言葉や感謝の気持ちなどを表現したものも見られます。たとえば、言葉では「ありがとう」「やすらかに」「Forever」「Eternally」など、漢字一文字では「愛」「和」「絆」「心」「楽」など、熟語では「一期一会」「倶会一処」(極楽浄土に往生すると、仏や菩薩と同じ場所で暮らすことができる、または現世の別れは別々でも来世で再会できる)などが多く見られます。
またお子さんがいないか一人娘、あるいは長男長女の結婚など、将来的に同じ家名の承継者がいなくなり、異なる苗字の祭祀者によって承継されることが予想される場合、両家墓として二つの家名を花立てなどに彫刻したり、家名の代わりに宗派のお題目(南無阿弥陀仏、南妙法蓮華経など)や関連する言葉を刻む場合もあります。なお存命の建立者名を朱色に塗る習慣は、生前戒名を受けた印として始まったと言われています。
他には家紋や好きな花柄、動物、故人の趣味や嗜好品、事績などを彫刻するケースもあり、彫刻する題材によっては、文字や紋様などの周囲を彫り下げて浮き立たせる立体彫り(浮き彫り)や、彫り師が写真やイラストを見ながら打刻の強弱で陰影を表現する影彫り、コンピュータ制御によりレーザー光線で彫刻するレーザー彫刻(写真彫刻)、あるいは切り絵のように色彩の異なる石材をパーツごとに切り抜いて張り合わせる象嵌(ぞうがん)加工といった特殊な技法が使われることもあります。