2016.10.17
東京都立小平霊園(東村山など)が2013年7月、「樹林墓地」の募集を行ったところ、16倍以上の競争率になったことが大きな話題を呼びました。
公営墓地としては横浜市に次ぐ2例目。新しい形態の墓地に対する都民の関心は高く、現地案内会(見学会)参加者募集では、土日5日間10回計300人の枠に2500人が応募。実際の募集では500体分の枠に8160体分の応募があり16.3倍と、見学会の倍の人気となりました。しかし、これは家族の遺骨用(13万4000円/粉状遺骨は4万4000円)の抽選倍率です。
生前申し込みとなる“本人用”325体分の枠には、何と7067体分の応募があり、21.7倍もの高倍率になっていました。
霊園を管理する東京都公園協会は「墓石を立てないタイプのお墓にこれほどのニーズがあるとは。想定外の結果」と驚いているそうです。ちなみに、同時に募集した都立霊園全体の一般墓地は倍率7.5倍と13年並み。「樹林墓地」の人気の高さがわかります。
「樹林墓地」は、もともとは「樹木葬」という言い方で、10年余り前から話題になってきました。
では「樹木葬」とはどんなものでしょうか。
「樹木葬」には、木の植え方や遺骨の埋蔵方法などにより、さまざまなバリエーションがあります。
木に着目すれば、1本か複数かですが、埋葬方法に着目すれば、1本の木に1体が対応する個別型、地下の区画を分ける集合型、同じスペースに埋葬する合葬型に分かれます。
また、遺骨を直接土に埋めるか、布袋などに入れるか、骨壺に入れたままかの違いもあります。さらに集合型は、決められた期限後は合葬墓に移すかどうかの違いもあります。
小平霊園の「樹林墓地」の場合、5種8本の「林」の下に、骨壺から遺骨を出し、土に還る布袋に入れ、土をかぶせる共同埋葬方式(合葬型)を採用しています。
さらに小平霊園では、隣接地域に樹木墓地を整備。この樹木墓地はシンボルとなる1本の木の周辺に遺骨を個別に埋葬する集合型で、30年間経過後は合葬墓に移すそうです。上の木だけでなく下の埋葬方法も前回とは大きく異なります。
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うえの・くにみつ 1956年生まれ。大学を卒業後、電機メーカー勤務などを経て、88年にイオ株式会社を設立、石のギャラリーを中心とした業務を展開する。東京都内を中心に大規模墓地や納骨堂の開発、寺院の活性化のプログラム(寺報発行サポート、墓地管理業務)などの事業に携わっている。