2016.10.14
旧来からある棚型・ロッカー型を納骨堂の第1期、仏壇型を第2期とすれば、第3期といえるのが、機械式の自動搬送型納骨堂です。ちょうど、機械式の立体駐車場と同じような構造で、必要なときに自分のご先祖さまの遺骨を呼び出す仕組みです。
その草分け的な存在にニチリョクという企業があります。同社は当初から納骨堂といわずに「堂内陵墓」といういい方をしていますので、堂内陵墓といった場合、自動搬送型納骨堂を意味するイメージがあります。ちなみに、このほかにも納骨堂には、屋内型墓所、室内墓所といういい方もあります。
その「堂内陵墓」第1号の本郷陵苑(東京都文京区)は、経営主体の興安寺の本堂を改築する際、地上5階建てのビルを建設。筆者の知る限りでは、室内に墓所6300区画を設け、ニチリョクが1999年から販売していました。1年目は認知度が低く、売れ行きは芳しくなかったそうですが、2年目以降人気となり、2003年までに3800区画を販売して04年に完売したといいますから、最後の1年では2500区画を販売した計算となり、人気の急上昇ぶりがうかがえます。
お参りの時は端末にカードを挿入すると、ほどなく骨壺を入れた厨子が礼拝堂に現れ、お墓にセットされるというユニークな構造をしています。また、地下1階は、既存の檀家墓地、1階が吹き抜けのある中世風のホールと礼拝堂、2階が斎場、3階が興安寺、4階が法事の会食などに使えるスペースとなっており、まさにワンストップ・サービスを提供できるビルとなっています。
人気の秘密はこうしたユニークで利便性の高い構造、清潔で豪華な室内墓所であることに加え、交通の便のよさ(5駅から徒歩5~8分)や価格の安さも大きかったようです。しかも、価格には永代使用料(永代供養付き)・陵墓使用料・彫刻・希望者には家族全員の生前戒名の無償授与まで含まれており、交通の便のよさと相まって、カード式に違和感を覚える人でも、心を動かされるのに十分かもしれません。
ニチリョクではこうしたニーズの高まりに対応し、その後、横浜・名古屋・鹿児島などでも堂内陵墓を建設し、これらはすべて完売。13年には東京に「両国陵苑」をオープンさせ、人気を呼んでいます。
1998年に墓石小売業界では初めて株式を店頭公開したリーディング・カンパニーのニチリョクが、屋外型の墓苑に加えて「堂内陵墓」に力を入れてきたことによって、納骨堂全体が注目されてきたとも言えます。
さらに、2009年には札幌のベンチャー企業が、堂内陵墓と同様の仕組み(ICカード+自動搬送)に、故人の映像が見られるテレビモニターを加えた納骨自動管理映像音響システム「パルティア」の販売を開始。すでに、横浜市の妙清寺、広島市のホスピタスホール、宮崎市の市営南部墓地公園、相模原市の市営納骨堂などに設置しています。
墓石にはめ込まれるか、お参りスペースの脇に設置されるテレビモニターで、故人の生前の姿が静止画や動画で示され、生前の声や読経などの音響も放送されます。ここが、ニチリョクの堂内陵墓との大きな違いです。そのため、より身近に故人を忍ぶことができる仕掛けとなっています。
注目すべきは、市営納骨堂としての導入されていることです。これまでの慣習を越えた自動搬送型納骨堂が、市営納骨堂として採用されつつあるということは、ゆくゆくは、このスタイルが、もしかしたら遺骨を供養する納骨堂として、標準仕様になる可能性も秘めているといえそうです。
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上野國光(うえの・くにみつ) 1956年生まれ。大学を卒業後、電機メーカー勤務などを経て、88年にイオ株式会社を設立、石のギャラリーを中心とした業務を展開する。東京都内を中心に大規模墓地や納骨堂の開発、寺院の活性化のプログラム(寺報発行サポート、墓地管理業務)などの事業に携わっている。