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【お墓トレンドレビュー 散骨その1】映画がイメージアップに貢献?

2016.10.21

 高倉健さんの遺作となった映画『あなたへ』をごらんになったことがありますか? 散骨をメーンテーマとした映画であったことでも注目されました。

 これまでにも、韓流ドラマや『マディソン郡の橋』『世界の中心で愛をさけぶ』『黄泉(よみ)がえり』『男たちの大和』など数多くの映画に散骨の場面が登場し、散骨の認知拡大やイメージアップの役割を果たしてきました。そのなかで『あなたへ』は、これまでの映画と違い散骨そのものをテーマにした初の映像作品ではなかったかと思っています。

 作品中では長塚京三さん演じる男性が「俺は嫌だよ、散骨なんて。墓がないなんて寂しすぎる」というセリフも出てきます。むしろ、そちらに共感した人もいるかもしれません。ですが、健さんのカッコよさも手伝って、散骨のイメージアップと普及に大きな影響を与えたような気がしてなりません。

 当然、気になってくるのは散骨の実施率です。しかし、これはどんなに調べても数字は見つかりません。大規模なサンプリング調査で、「散骨をしたいと思いますか」ではなく「散骨をしましたか」という設問の調査があれば、それが一番参考になると思うのですが、そうした設問がある調査は、残念ながらお目にかかったことがありません。

 散骨の実施率ですが、おそらく1%に満たない程度か、多くても2%にはなっていない気がします。ただ、散骨はお墓に入れても並行して実施できるため、必ずしも「墓か、散骨か」という二者択一の選択肢ではなく、「墓も、散骨も」という選び方もできますので、もう少し多いかもしれません。

意識と現実にギャップ

 古いデータですが、2003年の全日本葬祭業協同組合連合会による第7回「葬儀についてのアンケート」には、遺灰を海または山にまくなどの自然葬についての設問があります。その結果は、以下のとおりです。

「できれば自分はそうしたい」10.1%
「故人の希望ならそうする」26.9%
「法律的に問題なければそうしたい 」7.8%
「自分は墓地に葬ってほしい」25.2%
「一部の遺灰ならいいと思う」11.0%
「考えたことがないのでわからない」14.6%

 設問に多少疑問があるものの、これをみる限り13年前でも散骨肯定・容認派は過半数を占め、「そうしたい」「そうする」も37.0%に達しています。しかし、実際の実施率は1、2%程度だとすると、意識と現実には大きなギャップがあることが分かります。

 これは、散骨を実施するのは本人ではなく遺された人であり、周囲の合意を得たり、世の慣習に反して実施したりするのは容易ではないためだと考えられます。また、いまだ散骨は違法で異例なことと思われている面もありそうです。

 そこで、次回は散骨のこれまでの経緯や法的問題をみてみることにしましょう。

上野國光氏

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 上野國光(うえの・くにみつ)1956年生まれ。大学を卒業後、電機メーカー勤務などを経て、88年にイオ株式会社を設立、石のギャラリーを中心とした業務を展開する。東京都内を中心に大規模墓地や納骨堂の開発、寺院の活性化のプログラム(寺報発行サポート、墓地管理業務)などの事業に携わっている。


             
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