2016.10.21
散骨のこれまでの経緯や法的問題をみてみることにしましょう。
日本では実は、古代から遺体や遺灰を自然に還すことはよく行われていました。しかし、江戸時代に政策的に導入された檀家制度以降、仏教とお葬式やお墓が深く結びつけられ、死んだらお墓に入ることは慣習となってきました(これは日本特有のことで、海外の仏教寺院にお墓は通常はないようです)。
そのため、遺体や遺骨はすべて墓に入れなくてはならないという固定観念が生まれ、散骨など、それ以外の葬法は違法であるように思われてきたのです。
しかし、1991年に設立された「葬送の自由をすすめる会」が、「散骨は節度をもって行われるならば、違法ではない」との確信から、この年神奈川県沖の相模灘でヨットから散骨する自然葬を実施したのです。
これについて、法務省はマスコミからの問い合わせに「葬送のひとつとして節度をもって行われる限り、刑法190条の遺骨遺棄罪にはあたらない」と見解を出したとされています。また、厚生省(現・厚生労働省)も「『墓地埋葬等に関する法律(墓埋法)』は、遺灰を海や山にまく葬法は想定しておらず、法の対象外である」と見解を示したことで、自然葬が事実上、違法には当たらないとの認識が広まりました。
ただ、墓埋法や刑法190条に触れないとしても、現実には風評被害などで民事訴訟の対象となることはありえます。そうならないためにも、周囲に配慮しつつ控えめにすることは欠かせません。
具体的には、以下のようなことが求められます。
(1)遺骨は2ミリ以下に粉砕し遺骨と分からなくする。
(2)海では、海水浴場や養殖場、養魚場などが近くにある海域を避ける
(3)花を包んでいるセロハンなどは投げ入れない
散骨を考えるうえで、これらの点に留意しましょう。
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上野國光(うえの・くにみつ) 1956年生まれ。大学を卒業後、電機メーカー勤務などを経て、88年にイオ株式会社を設立、石のギャラリーを中心とした業務を展開する。東京都内を中心に大規模墓地や納骨堂の開発、寺院の活性化のプログラム(寺報発行サポート、墓地管理業務)などの事業に携わっている。