2016.10.13
公営墓地でも合葬墓が増えています。合葬墓であれば限られた土地で多くの遺骨を収納でき、墓地不足の解消に効果がある点が背景あると考えられます。また、公営墓地では、お参りする人もなく荒れてきた無縁墓地が増加しており、その対策として自治体が積極的に設置しているようです。
公営墓地では、合祀墓という表現を使用しないのと同様、宗教的なニュアンスがあることから永代供養墓という表現も使いません。「承継の必要のない墓」といった言い方をしていますが、事実上は永代供養墓と同じと考えていいでしょう。
また、年次法要がないケースも多く、年1回の献花だったり、実施する場合は「慰霊祭」といった表現を使ったりしています。
歴史的には、1993年に横浜市営日野公園墓地(横浜市港南区)に開設されたのを皮切りに98年に東京都立小平霊園(東京都東村山市)、2002年には、さいたま市の思い出の里市営霊園(さいたま市見沼区)にも設けられました。人気も高く、14年度の小平霊園の合葬墓では200の募集に対して3739件の応募があり、18.7倍の狭き門となりました。
03年7月には千葉県の市川市霊園にロッカー式の納骨壇がある合葬式墓地が開設され、1都3県に公営合葬墓地が出そろったかたちになりました。最近では、横浜市と小平市の公営霊園で、樹木の下に合葬する樹木墓地ができたことが話題になりました。
横浜市営墓地「メモリアルグリーン」(横浜市戸塚区)は、合葬墓のすべて新しいコンセプトが取り込まれた墓地として開発され、09年から募集が始まりました。ここには、「芝生型」「合葬式慰霊碑型」「合葬式樹木型」の3種類のお墓があります。
「芝生型」は、形態こそ石のプレートを地面に寝かせて配置した新しいデザインですが、承継者を必要とする従来型のお墓です(ちなみに一番人気で、募集初年度ですべて終了しています)。これに対し、「慰霊碑型」「樹木型」は、いずれも「合葬式」とあるように承継者を必要とせず、将来の不安はない永代供養型のお墓といえます。
「合葬式慰霊碑型」は、個人利用で初期費用9万円(使用料6万円+管理料3万円)。地上に慰霊碑を設置し、地下の納骨棚に骨壺を収蔵。ここでの「永代」の期間は30年です。30年経過したら、更新や改葬の申し出がない限り、自動的に合同埋葬室へ移動します。
合同埋葬室は、慰霊碑型の納骨施設内にある専用の埋蔵室で、遺骨を骨壺から取り出し、ほかの遺骨はとともに合同で保管する部屋です。ほかの方の遺骨と混じってしまうため、ここへの移動後は改葬ができなくなります。こうした運営方法は、どこの合葬墓でも同様です。
「合葬式樹木型」は、慰霊碑型よりは費用は高いものの、個人利用で初期費用20万円(使用料14万円+管理料6万円)。シンボルツリーのある区画の土中に骨壺を直接埋蔵します。そのため、改葬はできませんが、使用期限はなく永年使用となります。
都小平霊園には「樹林墓地」と「樹木墓地」の2種類があり、「樹林墓地」を12年に募集を開始し、13年2月から使用が始まりました。使用料は13万1000円(粉末は4万3000円)。ここでは5種8本の「林」に下に、骨壺から遺骨を出し土に還る布袋に入れ、土をかぶせる共同埋葬方式(合葬型)を採用しています。
一方、「樹木墓地」は14年に募集を開始しました。この「樹木墓地」は、シンボルとなる1本の木の周辺に遺骨を個別に埋葬する集合型。30年間経過後は合葬墓に移す点は、メモリアルグリーンと共通しています。先にオープンしたメモリアルグリーンをモデルとしているのかもしれません。
こうした公営墓地の合葬墓は、公営であるだけに、ほかの合葬墓よりは「永代」にならないリスクは少なく、将来的の安心感は高いというメリットがありそうです。少子高齢化が進み、承継者不足が解消されない限り、今後も合葬墓や永代供養墓は増え続け、従来のお墓も永代供養付が増えていくに違いありません。
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上野國光(うえの・くにみつ) 1956年生まれ。大学を卒業後、電機メーカー勤務などを経て、88年にイオ株式会社を設立、石のギャラリーを中心とした業務を展開する。東京都内を中心に大規模墓地や納骨堂の開発、寺院の活性化のプログラム(寺報発行サポート、墓地管理業務)などの事業に携わっている。