2016.10.13
「永代供養」は一説によると、江戸時代の僧侶が檀家の減少による収入減を補う目的で発案した商業手法だったとか。毎月の命日に小額ずつ受け取っていたお布施を、事前にまとめて集金できる当時としては、画期的なシステムだったようです。
供養の方法については、そのお寺が属する宗旨・宗派の法儀で行われます。
年1回供養祭を行うところや、毎月法要を営むところなどさまざまです。霊園にある永代供養墓は年1回が多いかもしれませんが、お寺が直接管理している永代供養墓は、毎年の春と秋のお彼岸とお盆の年3回、合同法要を行うケースが多いように思われます。
江戸時代にできたシステムですが、核家族化や少子化が進み、家族がお墓を永続的に維持管理しにくくなった現代社会でのニーズが高まっています。
一方で、リスクも考えておきましょう。
永代供養の期間が、事前に決められていても、管理者である霊園が倒産してしまったり、寺院が廃寺したりする場合は、永代供養墓そのものが管理されないケースが起こります。ですので、必ずしも「永代」保証されているわけではないということは念頭においたほうがいいでしょう。無縁墓地が増えているといいますが、霊園そのものが「無縁」化する可能性もないとはいえないのです。
実は横浜市内に、その代表例ともいえるある墓地があります。
その墓地は1969年に開発され、2万5000基の墓を有する市内最大級の墓地です。ところが、経営していた財団法人が99年に巨額の負債を抱え清算手続きに入りました。墓地を売り払って更地にする訳にもいかず、負債が解消されないまま何と15年も経過してしまいました。
この霊園では、全区画の6割が永代管理料を一括して収めるかたちだったといいますから、個別の永代供養墓だったということになります。ところが、運営財団の放漫経営で管理料は消えてしまい、現在は、残り4割の区画の管理料で全体をやりくりしているようです。最低限の維持・管理はされているものの、朽ちた資材が放置され、蛇口から水が出ないなど、荒廃が進んでいるとのことです。
霊園の運営者が経営破綻した結果、本来、求められていた管理・運営が長年にわたって行われずに現在に至っています。
霊園や墓苑の経営主体は、地方自治体、宗教法人、公益財団法人の3つの法人格に限られています。墓地埋葬法でお墓を経営するにはさまざまな規定をクリアする必要もあり、経営破綻が起こることは多いことではありません。また、破綻をしてもお墓のある土地に抵当権を付けたり、競売にかけることも勝手にはできないようになっています。
ただ、永代供養を依頼する側も受ける側も、基本的には初期費用のみで、その後、長期に渡って維持・管理する仕組みですから、すでに見たように双方にとっても、それなりにリスクのある仕組みであることは認識しておいた方がよいといえるでしょう。
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上野國光(うえの・くにみつ) 1956年生まれ。大学を卒業後、電機メーカー勤務などを経て、88年にイオ株式会社を設立、石のギャラリーを中心とした業務を展開する。東京都内を中心に大規模墓地や納骨堂の開発、寺院の活性化のプログラム(寺報発行サポート、墓地管理業務)などの事業に携わっている。