2018.10.24
タイトルには「墓」「江戸」「真実」と堅い単語が続いてなにやら難しそうだが、内容は純粋な歴史書や郷土史本と違って、ユニークだ。
なぜ、藩主の隣に側室の墓があるのか、と墓の並びの意味などに焦点をあてるるなど、墓に裏付けられた、あるいは推察できるエピソードが10話紹介され、歴史のおもしろさをあぶりだしている。
著者は日本経済新聞社で政治部長や編集局長を務め、現在は歴史エッセイスト。首相ら有力政治家の地方遊説に同行し、一行が寝ている早朝や仕事の翌日の休日を使って、各地の墓石を眺めてきた集積だという。
近年、庶民レベルでは墓じまいが広がり、古い墓が消えている。何十年か後、こうした隠れたエピソードは、墓とともに消え、墓が歴史の側面を語ることはなくなってしまうのだろうか。(新潮新書 740円+税)