2016.12.19
横浜市は長い間、市営墓地の公募を行っていませんでした。引っ越しなどで利用者から返還された区画を確保し、募集を再開したのは2011年度。実に22年ぶりでした。その後は毎年、久保山、三ツ沢、日野公園の3墓地で順番に利用者を募集しています。17年度は久保山の予定です。今回はその「久保山墓地」を訪問しました。
久保山墓地が開園したのは1874(明治7)年。横浜で最も古い市営墓地です。総面積は約12万6000平方メートルで、東京ドーム2.5個分の敷地に約1万4000区画あります。複数の寺院墓地が隣接しており、見渡すかぎりお墓が広がっている様子は壮観です。
園内に駐車場がないため、バスでの墓参が便利です。京急本線「黄金町駅」の改札口を出て「黄金町」バス停から市営バス32系統(「保土ヶ谷車庫行き」)に乗車。5~6分乗り、「久保山霊堂前」か「聖隷横浜病院前」で下車すると、すぐに久保山墓地の入口があります。JR横須賀線「保土ヶ谷駅」からも同じバスが利用できます。1時間に1本程度の運行なので、時刻表は確認したほうがよいでしょう。
墓地の入口はバス通りを含め5か所以上あります。園内は起伏に富んだ地形のため、階段を上り下りしなければなりません。手すりのあるスロープも設置されていますが、傾斜がきついところもあり、車いすでの墓参は難しそうです。このあたりは最初からバリアフリー設計された最近の霊園との大きな違いです。
広大な墓地を歩き回って気づいたのが、掃除や花立に必要な水場やお手洗いが管理事務所横に1カ所しかないことです。実は久保山墓地では「茶屋」という墓参者用の施設が十数軒、点在しているのです。
お花や線香を扱うため、もともと「花茶屋」と呼ばれていたそうですが、そのほかにも墓参代行や墓所清掃から墓石工事、名義変更の取り次ぎまで、お墓のことなら何でもお願いできるのが特徴です。
そんな茶屋のひとつ、「かるべ茶屋」では数千件の清掃契約を請け負っています。ご主人によると「何世代にもわたる固定のお客様も多く、国内でも珍しいシステム」だそうです。飲み物を買って店内で一服できるほか、20人程度まで会食できるスペースもあります。利用者は水場やお手洗いを借りることもできます。
墓参は大切な家族の行事であることは承知しつつ、掃除などの負担も多いと考えていた記者。こうしたお茶屋さんとの付き合いがあれば、例え一人でお墓を守ることになっても心強いだろうと感じました。
久保山墓地は古いお墓だけに、歴史を感じる場所があちこちにあります。
まず敷地内に立つ久保山火葬場。現在は場所も少し移動し、建物も新しくなっていますが、第二次世界大戦後、巣鴨拘置所で絞首刑となった東条英機らA級戦犯7人が火葬されたことで知られています。
戦没者の重厚な墓碑も多く、手厚く埋葬されたことが分かります。古くは戊辰戦争の兵士も眠っています。
著名人のお墓もいくつか見かけました。江戸時代に現在の関内あたりを埋め立てた吉田勘兵衛、『赤毛のアン』の翻訳者の村岡花子、横浜商法学校(現在の市立商業高校)の初代校長の美澤進…。関東大震災の犠牲者を埋葬した合同墓碑もあり、横浜ゆかりの人々や土地の歴史に触れることができます。
繁華街から少しはずれた小高い丘にある久保山墓地からは、ランドマークタワーなど横浜の街が一望できます。お天気がよければ富士山も見えるそうです。ドラマのロケ地として人気というのもうなずけました。
市営墓地の募集は毎年9月ごろ行われます。申し込みは横浜市民に限られ、遺骨を自宅で保管しているか、久保山墓地の場合は隣接する久保山霊堂に預けていることが条件。他の墓地にすでに埋葬している場合は応募できません。
2011年度以降は毎年、300区画程度募集していますが、希望者が多く、平均3~4倍の競争率となっています。抽選に当たると区画が割り振られますが、利用者が区画を選ぶことはできません。
12年に市が行ったアンケートによると、墓地取得を考えている市民の46%が市営墓地を希望。市担当者は人気の理由を「市が管理運営していることへの安心感」ではないかと分析しています。1㎡あたり14.5万円というお手頃な永年使用料も魅力です。一般的な大きさで20万~27万円前後、墓石代込みで100万円程度からお墓が建てられます。ただし、久保山墓地は丘陵地を開発した墓地であるため、斜面が割り当てられる可能性もあります。その場合、基礎部分に石を積んで平らにするなど、自己負担の工事費が別途発生します。
横浜市は久保山、三ツ沢、日野公園の3墓地で、お墓を引っ越したり、継承者がいなくなったりして返還された墓所を2000区画以上確保しました。今後も順次、利用者を募集するそうです。
(村山玲子)
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よこはましえいくぼやまぼち
総額目安 20.3 万円~
区間名 | 面積 | 永代 使用料 |
墓石価格 | 総額 | 年間 管理費 |
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一般墓地 | 1.4 ㎡ | 20.3 万円 | 5,000 円 | ||
一般墓地 | 1.9 ㎡ | 27.6 万円 | 5,000 円 |
京急本線 黄金町駅
電車で |
1:京急本線「黄金町駅」からバス5分、「久保山霊堂前」下車徒歩2分 2:JR横須賀線「保土ケ谷駅」からバス8分、「久保山霊堂前」下車徒歩2分 |
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車で | |
その他 |
名称 | 横浜市営久保山墓地 |
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運営区分 | 公営 |
募集条件 | 宗教不問 |
埋葬スタイル | 一般墓地 |
所在地 | 横浜市西区元久保町3-24 |
敷地面積/総区画数 | 126,000㎡/ 14,000区画 |
開園年 | 1874年 |
主な設備 | |
駐車場 | |
特色 |
【申し込み資格など】
・横浜市に3か月以上在住の方(2017年6月1日以前に住民登録をされている方)
・1世帯1申込み(日野こもれび納骨堂 合葬式納骨施設を除く)
・遺骨保持区分の申込者については、現に自宅や一時保管施設に遺骨を保管・収蔵している方