2014.12.12
東京メトロ丸ノ内線「新宿御苑前駅」から徒歩3分、副都心線・都営新宿線「新宿三丁目駅」、JR・大江戸線「新宿駅」からも徒歩圏内にあります。「新宿御苑前聖陵」は東京都・新宿区指定文化財を数多く収蔵する歴史ある寺院が運営しており、宿場町から発展した大都会・新宿の歴史が感じられます。
丸ノ内線・新宿御苑前駅を降りて新宿通りの一本北側の路地に入ると、新宿御苑前聖陵にたどり着きます。新宿通りをはさんで、新宿御苑とは反対側の路地です。
開苑は2014年5月。建物全体が「和」のテイストを感じさせるデザインになっています。建物の周りには生け垣が施され、建物との間に小さいながらもわびさびを感じさせる日本風の庭園がつくられています。施設を運営する太宗寺の問川良元住職が自ら手掛けた庭です。
エントランスホールに入ると、正面に大きな窓が設けられ、緑に囲まれた寺の墓地を眺めることができます。「外墓地にお墓参りにきているようなイメージで、お参りにお越しいただきたい」という住職の思いからの設計だといいます。正面右側にはゆったりと休憩がとれるラウンジがあり、住職自慢の庭を眺められる窓もあります。エントランスや各階のフロアには生花が飾られ、随所に住職の心遣いを感じます。
参拝フロアは3~6階。各階には、それぞれ3つずつ参拝ブースが配置されています。エントランスにブースの利用状況が分るモニターがあり、空きを確認してエレベーターで参拝フロアに向かいます。自動搬送式の納骨堂で、各ブースの扉横にある端末に参拝カードをかざすと1分ほどで、お骨を納めた厨子がお墓に運び込まれます。扉が開いて参拝する仕組みです。お墓も白を基調にしたもの、黒を基調にしたものなどいくつかのデザインがあり、参拝者の気に入ったお墓でお参りすることができます。2階には30人程度を収容できる法要室も設けられています。
この納骨堂を運営する太宗寺の歴史は1596(慶長元)年にさかのぼります。太宗という僧が、この地に太宗庵を建造したのが始まりとされます。新宿御苑一帯を下屋敷としていた徳川家家臣・内藤家五代正勝の葬儀を行ったことから内藤家の信望を集め、寄進を受けて太宗寺が創建されました。以降、内藤家の菩提寺となっています。
太宗寺は貴重な文化財を数多く所蔵しています。境内には江戸六地蔵の一つで、東京都指定文化財の銅造地蔵菩薩座像が鎮座しています。このほか、「内藤新宿の閻魔さん」と親しまれている閻魔像や「葬頭河の婆さん」と呼ばれ、内藤新宿の遊郭で信仰された「奪衣婆像」、内藤正勝の墓などがあります。周辺には公園散策やショッピング、グルメなどのスポットも充実しており、お墓参りに立ち寄るには絶好の立地。日本屈指の繁華街となった新宿の歴史を見続けてきたお寺といえます。
そんな歴史のある寺院が最新式の納骨堂を導入したのは、東日本大震災がきっかけでした。被災者たちが自分の生活もままならないのに津波で流されたお墓を再建しようとする姿に感銘を受けた住職が、墓不足で遺骨を納める場所が少ない東京都内の実情を憂い、手軽にお参りができる場所を作る必要があると、納骨堂の建設を決めたそうです。
永代使用料は90万円。遺骨を納める厨子や御影石の銘板とその彫刻、永代供養料もその費用に含まれています。承継者がいなくなってしまった場合も、太宗寺が合祀施設で永代にわたり供養をします。年間会費は1万5000円。
区画は4020あり、JR中央線や東京メトロ丸ノ内線で乗り換えなしに来られる八王子市や中野区、杉並区の利用者が多いそうです。
(石垣良幸)