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一条真也の供養論㊿(最終回) 安倍氏の戒名と麻生氏の弔辞

2022.09.01

 2022年7月12日、参院選の街頭演説中に銃撃され、67歳で死去した安倍晋三元首相の葬儀が行われた。場所は、東京・芝公園の増上寺である。葬儀会場には約200人が参列したほか、多数の人が献花や焼香に訪れたが、安倍元首相の戒名が「紫雲院殿政誉清浄晋寿大居士」であることに驚いた。わが社の葬祭施設でもある「紫雲閣」と同じ「紫雲」が戒名の最初に付けられていたからである。
 「紫雲」とは人の臨終の際に迎えに来るという仏が乗る紫色の雲のことだ。そういえば、わたしはかつて、先の紫雲閣を国民的作家だった司馬遼太郎の名作『坂の上の雲』にかけて、「坂のぼる上に仰ぐは白い雲 旅の終わりは紫の雲」という歌を詠んだことがある。
 
 葬儀では、友人代表として、自民党の麻生太郎副総裁(元首相)が次のように弔辞を捧げた。麻生氏は、冒頭に「安倍先生、今日はどういう言葉を申し上げればよいのか、何も見つけられないまま、この日を迎えてしまいました」と呼びかけ、故人とのさまざまな思い出を語った後、「先生はこれから、(父親の)晋太郎先生の下に旅立たれますが、今まで成し遂げられたことを胸を張ってご報告をして頂ければと思います。そして、(祖父の)岸信介先生も加われるでしょうが、政治談議に花を咲かせられるのではないかとも思っております。ただ先生と苦楽を共にされて、最後まで一番近くで支えて来られた昭恵夫人、またご親族の皆様もどうかいつまでも温かく見守って頂ければと思います。そのことをまた、家族ぐるみのお付き合いをさせて頂きました友人の一人として心からお願いを申し上げる次第であります。まだまだ安倍先生に申し上げたいことがたくさんあるのですが、私もそのうちそちらに参りますので、その時はこれまで以上に冗談を言いながら、楽しく語り合えるのを楽しみにしております。正直申し上げて、私の弔辞を安倍先生に話して頂くつもりでした。無念です」と述べた。失言が多いことで知られる麻生氏だが、この裏表のない真心の言葉は多くの国民の心に響いたことと思う。わたしも、感動した。

 このような残された人の言葉は、亡くなった人に届いているのだろうか。数えきれないほどの葬儀に参列し、その後の遺族の不思議な経験談を聴き、心霊関係の本も少なからず読んだわたしの考えは、「弔辞や故人へのメッセージは必ず届いている」である。そうでなければ、葬儀など行う意味はない。生前親交のあった「霊界の宣伝マン」こと丹波哲郎さんは、「葬儀のとき、亡くなった人は遺影のところに立っているか、棺に腰かけて、自分の葬儀の様子を見ている」と言われていた。
 また、医療と心霊科学の第一人者である東京大学名誉教授の矢作直樹さんと対談したとき、「肉体は死んでも、最後まで聴力と臭覚だけは残っている。だから、枕経をあげたり、線香を焚いて、死者を導くのだ」という会話を交わした。当然ながら、弔辞は聴こえているのだ。(なお、対談内容は、『命には続きがある』(PHP文庫)に収められている)
 ともあれ、憲政史上最長の政権を築いた偉大な政治家である故人の御冥福を心よりお祈りいたします。合掌。

 本連載は今回で最終回となります。50回もの長きにわたるご愛読に感謝いたします。

 いちじょう・しんや
 1963年生まれ。福岡県出身。早稲田大学政治経済学部卒。本名は佐久間庸和。大手冠婚葬祭会社サンレー社長。『老福論』『葬式は必要!』『愛する人を亡くした人へ』『命には続きがある』『儀式論』など著書は100冊以上。2012年、『論語』の精神の普及により、第2回「孔子文化賞」を受賞。2018年、上智大学グリーフケア研究所客員教授に就任。 

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 連載『供養論』は、産経新聞出版より書籍化される予定です。(ソナエ編集部)


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