2022.05.02
いま、「グリーフケア」が注目されている。我が国は超高齢社会を迎える一方で、核家族化などで近親者の死を身近に経験したり、死と向き合う機会が減少している。さらに、伝統的な宗教や地域社会の弱体化により、葬送に対する地域社会からのサポートも減ってきている。その結果、悲嘆(グリーフ)を抱える人々を支える場所が少なくなり、そのサポート&ケアの重要性が高まっているのだ。
4月9日、わたしは小倉から新幹線で姫路に向かった。全日本冠婚葬祭互助協会(以下、全互協)の山下裕史会長(株式会社117社長)が経営される結婚式場「ラヴィーナ姫路」で開催されるグリーフケアの式典に参加するためである。わたしは、全互協の副会長およびグリーフケアPT座長として、葬祭業界におけるグリーフケアの資格認定制度を立ち上げた。そのファシリテーター10名が無事に任務を修了し、彼らには上級グリーフケア士の資格が与えられることになった。
14時30分から、第1期ファシリテーター修了式が行われた。山下会長の挨拶に続いて、グリーフケアPTの座長として挨拶に立ったわたしは、「『選ばれし者の恍惚と不安、二つ我にあり』という言葉があります。フランスの詩人ポール・ヴェルレーヌの言葉ですが、太宰治が『葉』という小説で使い、前田日明も新生UWFの旗揚げの挨拶で使いました。全国から選び抜かれて集ったファシリテーターのみなさんも、同じ思いではなかったでしょうか。いま一番、グリーフケアを学んでほしいのはロシアのプーチン大統領です。彼が起こした戦争で、いかに多くの悲嘆が生まれているのかを知ってほしいです。グリーフケアは人間愛の発露であり、幸福へのサポートであり、平和への祈りです。グリーフケアという考え方が広まれば、この世から戦争がなくなるかもしれません。みなさんの今後の活躍に期待しています。本日は、誠におめでとうございます!」と述べた。
その後、一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団の金森茂明理事長(株式会社レクスト社長)から修了証および認定証の授与が行われた。その様子を見ながら、わたしの胸は熱くなった。2007年に、わたしが『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)というグリーフケアの書を書いたとき、互助会業界のほとんどの人は「グリーフケア」という言葉を知らなかった。あれから15年・・・ついにグリーフケア資格認定制度が始動し、日本初いや世界初の上級グリーフケア士が誕生したのだ。
わたしは、第1期ファシリテーターを修了し、見事に上級グリーフケア士となられた10人の方々に心からの拍手をお送りした。
いちじょう・しんや
1963年生まれ。福岡県出身。早稲田大学政治経済学部卒。本名は佐久間庸和。大手冠婚葬祭会社サンレー社長。『老福論』『葬式は必要!』『愛する人を亡くした人へ』『命には続きがある』『儀式論』など著書は100冊以上。2012年、『論語』の精神の普及により、第2回「孔子文化賞」を受賞。2018年、上智大学グリーフケア研究所客員教授に就任。
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