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【一条真也の供養論】⑨東日本大震災八周年追悼式

2019.04.01

 今年の3月11日は、東日本大震災の発生から8年目の日だった。
 当日は全国で大小さまざまな追悼の行事が催されたが、14時半から東京では、国立劇場で内閣府主催にて「東日本大震災八周年追悼式」が執り行われた。平成最後の追悼式典となったが、わたしも冠婚葬祭業界の代表として参列した。

 式典はやはり荘厳そのものだったが、「開式の辞」で追悼式実行副委員長の菅官房長官が「ただ今より、東日本大震災記念式典を行います」と宣言したのには仰天した。「追悼式典」を「記念式典」と言い間違えたわけである。厳粛なセレモニーの冒頭で痛恨のミスだったが、わたしは「八周年」という表現にも違和感があった。
 なぜなら、「周年」というのは創業とか結婚とか、お祝いのイメージがあるからである。それゆえに原爆の日や終戦の日に「周年」を使うのも違和感をおぼえる。悲劇の場合は「~周年」ではなく「~年」がふさわしいように思う。だから、わたしは「東日本大震災八年」というふうに表現している。
 
 また、実行委員長・主催者である安倍総理の式辞は、犠牲者への鎮魂や慰霊の言葉というよりも、残された被災者の方々への復興の現状の説明が多く、なんだか政策アピールのように感じられた。もっと、死者への言葉が聞きたかった。一方で、遺族や被災者の方々の「ことば」はいずれも死者へのメッセージで、非常にリアルであり、亡くなった家族への情愛がこもっており、聴いていておのずと涙が流れてきた。
 そして、退場時に福島県遺族代表の高齢男性が階段につまずいて転びそうになったとき、同じく福島県の被災者の女性がさりげなく支えてあげた姿に感動した。極限の経験をされた方の心の優しさを見せていただいたように思う。

 それにしても、このような追悼式を行うことは素晴らしいことである。
 この日は150を超える諸外国の関係者も参列されていたが、オリンピックが「人類の祭典」なら、このような追悼式も「人類の典礼」であると思った。世界中の多くの人々が犠牲者のために献花する姿を見て、わたしは「生者は死者とともに生きている」「人間とは死者を弔う存在である」ということを改めて痛感した。

 もうすぐ平成が終わるが、30年におよぶ平成の歴史の中で、最大の出来事はやはり東日本大震災ではないだろうか。わたしたちの人生とは喪失の連続であり、それによって多くの悲嘆が生まれるが、大震災の被災者の方々は、多くのものを喪失した、いわば多重喪失者である。家を失い、さまざまな財産を失い、仕事を失い、家族や友人を失った。しかし、数ある悲嘆の中でも、愛する人の喪失による悲嘆の大きさは特別だ。グリーフケアとは、この大きな悲しみを少しでも小さくするためにある。新時代においても、人類が人類であり続ける限り、この役割が失われることは永劫にないであろう。


 いちじょう・しんや
 1963年生まれ。福岡県出身。早稲田大学政治経済学部卒。大手冠婚葬祭会社サンレー社長。『老福論』『葬式は必要!』『愛する人を亡くした人へ』『命には続きがある』『儀式論』など著書は90冊以上。2012年、『論語』の精神の普及により、第2回「孔子文化賞」を受賞。上智大学グリーフケア研究所客員教授。


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  • 一条真也さん

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