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【一条真也の供養論】①8月は死者を想う季節

2018.08.03

 「供養」とは、死者と生者とのコミュニケーションの問題だ。
 今年も8月がやってきた。 日本人全体が死者を思い出す季節である。 6日の「広島原爆の日」、9日の「長崎原爆の日」、12日の御巣鷹山の日航機墜落事故の日、そして15日の「終戦の日」というふうに、3日置きに日本人にとって忘れられない日が訪れる。
 そして、それはまさに日本人にとって最も大規模な先祖供養の季節である「お盆」の時期とも重なる。まさに8月は「死者を想う季節」と言えるだろう。
 
 わたしは人類の文明も文化も、その発展の根底には「死者への想い」があったと考える。約7万年前に死者を埋葬したとされるネアンデルタール人たちは「他界」の観念を持っていたとされる。それは、「ホモ・サピエンス」と呼ばれるわたしたち現生人にも受け継がれている。

 埋葬という行為には人類の本質が隠されているように思える。それは、古代のピラミッドや古墳を見てもよく理解できるのではないだろうか。埋葬は文化のシンボルであり、墓は文明のシンボルであると思えてならない。拙著『唯葬論~なぜ人間は死者を想うのか』(サンガ文庫)では、葬儀とは人類の存在基盤であるという考えを展開した。

 さて、多くの人にとって、死者の具体的なイメージとは「先祖」ではないか。
 その先祖を供養する最大の行事が「お盆」である。「盆と正月」という言葉が今でも残っているくらい、「お盆」は過去の日本人にとっての楽しい季節の1つだった。年に1度だけ、亡くなった先祖たちの霊が子孫の家に戻ってくると考えたからである。

 古来、日本人は先祖の霊によって守られることによって初めて幸福な生活を送ることができると考えていた。その先祖に対する感謝の気持ちが供養という形で表わされたものが「お盆」だ。帰ってくる先祖を迎えるために迎え火を燃やし、各家庭にある仏壇でおもてなしをしてから、再び送り火によってあの世に帰っていただこうという風習は、現在でも盛んだ。

 どんな人間にも必ず先祖はいる。しかも、その数は無数といってもよい。これら無数の先祖たちの血が、たとえそれがどんなに薄くなっていようとも、必ず子孫の1人である自分の血液の中に流れているのだ。「おかげさま」という言葉で示される日本人の感謝の感情の中には、自分という人間を自分であらしめてくれた直接的かつ間接的な原因のすべてが含まれている。そして、その中でも特に強く意識しているのが、自分という人間がこの世に生まれる原因となった「ご先祖さま」なのである。

 いちじょう・しんや
 1963年生まれ。福岡県出身。早稲田大学政治経済学部卒。大手冠婚葬祭会社「サンレー」社長。『老福論』『葬式は必要!』『愛する人を亡くした人へ』『命には続きがある』『儀式論』など著書は90冊以上。2012年、『論語』の精神の普及により、第2回「孔子文化賞」を受賞。上智大学グリーフケア研究所客員教授。


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  • 一条真也さん

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